VITAL AUDIO VA-II

3,000円ギターケーブル比較レビュー(その3)

前回:
3,000円ギターケーブル比較レビュー(その1)
3,000円ギターケーブル比較レビュー(その2)

あと3本今回は復活したモンスターも登場。

7.Ex-Pro FL series 3.0m S/S

Ex-proもプロユーザの多い国産メーカーです。主にハイエンドケーブルや電源周りの製品を扱っています。
Ex-proのギターシールドはFAとFLの2つのシリーズがあります。メーカーが言うにはFAは高ダイナミックレンジで歪ませる音に向いていて、FAはクリーントーン向けという事らしいのですが、ダイナミックレンジが広いから歪みに向くっていうのもよく解りません。価格はFAの方が少し高くて今回のレンジからは外れてしまいます。FLはテスト時(2021年2月)の時点で3,608円(サウンドハウス)でした。amazonだともう少し高いようです。
太さは6.8mmとCAJ MC並みにありますが、FAの方はなんと8mmもあるので、Ex-proとしては「細い方」のケーブルになります。

スペクトラムアナライザ

Ex-pro FL
Ex-pro FL Fmaj7をフロントPUで弾いた場合
Ex-pro FL
Ex-pro FL Fmaj7をリアPUで弾いた場合

全体にProvidenceのF201によく似た波形です。カナレにもよく似ていますが、カナレのウィークポイントである低音部はしっかりとカバーされているようです。高音部も低音部もこれと言った厚みのある部分が無く、よく言う「フラット」な特性に近いのではないかと思います。

Ex-Pro FL series 3.0m S/Sの評価

Ex-pro FLの採点
Ex-pro FLの採点

よく言えば、「ナチュラルで素直な音」悪く言えば「地味で没個性」なのですが、別にケーブルで音作りをするわけではありませんし、エフェクターを多用する人にはかえってその方がいいのではないかと思います。この主張をしない「おとなしさ」はおそらく様々なアンプでも大きく変わりそうにないので、いろんな環境で安定した音を出せそうです。
ハイも特に耳に痛くなることも無く、上から下までまんべんなく出ています。おとなしいからと言っても、決して寝ぼけた音ではありません。ピッキングに対する反応も速く、カッティングにも切れ良くついて来てくれそうです。さすがプロの利用が多いのもうなずけます。
「クリーンに向く」と言うメーカ主張ですが、だからと言って歪ませるのに向いてない訳ではないと思います。歪ませてもちゃんと良い音してますしね。むしろFAのクリーン音に興味があります。8mmの極太ケーブルがどんな音するんでしょうか?
Providence F201と同じような印象でしたが、こちらは直後にテストしたにも拘らず、あのノイズは発生しませんでした。

Ex-Pro FL series 3.0m S/Sの購入はこちら(サウンドハウス)
Ex-pro FL
癖が無く素直な音のEx-pro FL

9.VITAL AUDIO/ VA-II-3M S/S

VITAL AUDIOもハイエンドケーブルとパワーサプライなどを中心に手掛けている日本のメーカーです。それにしても多いですね。こういったメインではない分野でのマニアックなこだわりの強い製品作りは日本人の独壇場かもしれませんね。むしろ海外製品のハイエンドケーブルってベルデン、モンスターくらいしか知名度無いですし。これだけ国産品が充実していれば、海外製品の入る余地が少ないってこともあるかもしれません。
VITAL AUDIOのケーブルは現在、通常のVAシリーズ、VAにコバルトメッキのプラグを付けたCAVAシリーズ、カールケーブルのVPC(ストレートも有り)シリーズの3種です。VAは同社ケーブルの中核で、ギター用のVA-II、ベース用VA-III、オールラウンド型としてのVA-IVがあるようです。
今回テストしたVA-IIはギター用に最適化されていて、芯線の太さを従来ケーブルの2~3倍とし伝達率を高めている他、シールド部や素材にもかなり拘っているようです。プラグも24Kメッキ(今回のテストでは、これとProvidenceだけ)と、ミドルクラスとはいえかなり豪華な仕様です。
その割に価格は3,047円(サウンドハウス)と他社よりリーズナブル。太さは6.5mmと芯線が太い割には常識的な太さです。

スペクトラムアナライザ

VITAL AUDIO VA-II
VITAL AUDIO VA-II Fmaj7をフロントPUで弾いた場合
VITAL AUDIO VA-II
VITAL AUDIO VA-II Fmaj7をリアPUで弾いた場合

全体に山に厚みがあります。低音部はカナレの隙間を埋めたくらいですっきりした印象。中高音域もカナレで谷になっている部分がかなり埋まっています。超高音域は赤が目立っているように、少し控えめになっている様子。

VITAL AUDIO/ VA-II-3M S/Sの評価

VITAL AUDIO VA-IIの採点
VITAL AUDIO VA-IIの採点

あくまで個人的な意見ですが、今回の10本の中では一番良いと感じました。もちろん音質は主観的な判断しかできません。しかし総合的なパフォーマンスは文句無しに上位にあると思います。
このクラスでこのレベルにあるのはCAJのMCですが、あれはたまたまサウンドハウスで安くなっているだけで、他のショップの実売価格を見ると、これよりも1クラス上になります。
ローノイズ、ハイパワー、それに音の反応も速く、音も重過ぎず、クリーン良し、ドライブ良し、程よい太さで取り回しも良く、文句も有りません。私はもう1本買って、CAJと並行して使っていこうと思います。(なぜ2本かと言うと、ギター>ペダルボードとペダルボード>アンプを1セットと考えてるからです)
ミドルからハイにかけての味付けが絶妙で、小気味よいカッティング、クランチでのソロはいつまでも弾いていたくなるほどです。リアPUでも耳に痛くなることは少なく、しかしちゃんと音が抜けてくるのはさすがです。コバルトメッキプラグのCAVAも試してみたくなりました。唯一プラグカバーのメッキがピカピカ過ぎて、却って安っぽく見えるので、CAVAと同じように黒くしたら良いのにって思いました。

VITAL AUDIO/ VA-II-3M S/Sの購入はこちら(サウンドハウス)
VITAL AUDIO VA-II
今回のテストで個人的にNo.1のVITAL AUDIO VA-II

10.MONSTER CABLE / MONSTER CLASSIC CLAS-I-12

モンスターケーブルは、現在のハイエンドケーブルの火付け役とも言えます。元々はオーディオ分野での高性能ケーブルで評判を得て大きくなった会社です。80年代くらいからでしたかね?
それまでギタリストは楽器屋さんでギターメーカーブランドやアンプメーカーの名の付いたケーブルを入手して、長さや色などの好みで選んでいるような状況だったと思います。カールコードも当時は結構使ってる人いましたね。耐久性は話題に上がりましたが、ギターケーブルで音が変わるなんて意識は、プロはともかくアマチュアにはそれほど無かったと思います。何しろ昔のギターケーブルはよく断線しましたから(笑。カナレを使ってると、結構ツウを気取れた時代です。
そこにモンスターケーブルが登場して、一気にプレミアムギターケーブルの時代が来ました。プロの誰それはどこのケーブルを使ってるとか、アマチュアでも高級ケーブルを使うようになり、エフェクターの配線まで、高級ブランドの数千円するパッチケーブルが良いなんて際限無いことになって、現在に続くわけです。なんと罪作りな(笑。

そんなモンスターケーブルですが、数年前に一気に品薄になってほとんど手に入らなくなりました。何故かをネットで調べても詳しい理由は判りませんでした。当時の代理店のオールアクセスのアナウンスでも困惑していることが見て取れます。何しろ高額の代償として「生涯補償」を謳ってたケーブルなので、サポート業務も請け負う国内代理店で供給されなくなると大問題です。オールアクセスはそのまま代理店業務を閉じてしまい、ほぼ日本では入手不能と言う状況が数年続いていました。
久しぶりにamazonでモンスターケーブルを見つけてこれを購入したのですが、やっと代理店もキクタニに決まって供給再開されたようです。そして価格は下がった代わりに中国製になりました。下がったと言っても3千円から1万円くらいの値幅があるのでまだまだ高価なケーブルです。

長々と前置きを書きましたが、このMONSTER CLASSICは復活したMONSTER CABLEの中でも一番下のシリーズです。本製品の購入時のamazon価格は3,372円。今はもうサウンドハウスでも取り扱いが始まったようですね。
特筆すべきなのは、今回のテスト10本の中ではこれだけが2芯のスパイラルケーブルで、同軸ケーブルではありません。通常は芯線の周りをグラウンドを兼ねた外部導体が囲み、それが電磁シールドの役割をするのですが、モンスターはスパイラルケーブルでも同等の耐ノイズ性が可能と考えたのでしょうか。そのためか、(訂正します。ちゃんと同軸ケーブルでした。私がどこかで勘違いをしたようです)高性能ケーブルとしても割と細く、太さはカナレと同じ5.8mmしかありません。※メーカー公表が無いため太さは実測
※何故間違えたかというと、公式サイトのこのページ、違う2芯ケーブルの画像が使われています。

スペクトラムアナライザ

MONSTER CLASSIC
MONSTER CLASSIC Fmaj7をフロントPUで弾いた場合
MONSTER CLASSIC
MONSTER CLASSIC Fmaj7をリアPUで弾いた場合

カナレよりも低音は山が大きく、「モンスターは音が太い」を実証しているともいえる。中~高音域もちらちらとカナレの赤が見えるので、全体的にファット方向に振っていると思える。

MONSTER CLASSIC CLAS-I-12の評価

Monster C;assicの採点
Monster C;assicの採点

オーディオの世界では、「オカルト」だの「ぼったくり」だの、否定派には散々叩かれてきたモンスターケーブルですが、楽器界ではそれなりの評価を受けてきたように思えます。それでもコスパは低いとは言われてましたけど。
今回、新シリーズとなったこのMONSTER CLASSICは、他のケーブルのスッキリ感と比べるとかなり「ファット」でローエンドを補強しているように聞こえます。「モンスターを使うと音が太くなる」とも昔から言われていましたけど、それが実証されたようにも思えます。
ある意味「古臭い」音でもあるので「クラシック」の名は伊達じゃないとも思いました。動画内でも言っている通り、70年代のハードロックが似合いそうなケーブルですが、決して悪い音では無いです。今回マーシャル+ストラトという絶好の組み合わせでその真価が生かされたと思います。オールラウンドでは無いですが、特定の分野ではとても光る音を持っていると感じました。
ただ、この価格帯は国産メーカーが異常なほどのコスパに優れた良製品を出しているので、ネームバリューはあるでしょうけど、それらと戦うのは大変だろうなと思います。
カナレと同じくらい「細い」ケーブルは腰が無くフニャフニャで、取り回しや片付けは楽そうに思えます。また、VITAL AUDIOと同じようなピカピカのプラグカバーも少し安っぽいかと。もっと上のクラスのケーブルはオール金メッキとかで高そうには見えるのですが、これはちょっとね(少し黒っぽいメッキなのでVAよりややましかな?)。
もう一つ、今回の10本中これだけが「箱入り」です。高級感はあるんですが、他社を見ても簡易包装でもう数百円下げられたらもっと競争力あるのに…と思いました。

MONSTER CLASSIC CLAS-I-12の購入はこちら(サウンドハウス)
MONSTER CLASSIC
悪くは無いけど既に名前通り過去のものかMONSTER CLASSIC

そんな訳でやっと10本のシールドケーブルのテストを終えました。いや、大変だった。動画のスタジオ撮りだけだと4時間ですが、その前に2回3時間ずつスタジオで試してるし。自宅でもDAWに取り込んでスペクトラムアナライザ画像を取ったり、何やかやで1か月以上これに掛かりきりです。
さて、次回はこれの最終回。色んなデータ比較をしながら総括をしたいと思います。

MONSTER CLASSIC記述の間違いについて

テスト時点で情報の少ない中、本家サイトのこの画像を鵜吞みにしてしまったためでした。
実際はこちらの画像が正しいはずです。間違いなく同軸ケーブルです。
申し訳ありませんでした。

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